1001【基本的人権「憲法上の権利の主体①】

憲法
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今回は、憲法上の権利の主体である国民、そして外国人がテーマです。

憲法上の国民

憲法上の権利を規定する日本国憲法第3章は「国民の権利及び義務」となっています。

憲法第11条は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」と規定しているのです。

憲法上の権利の主体は「国民」とされています。

この「国民」の要件については憲法第10条が「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、国籍法が国籍取得の要件を定めています。

外国人

憲法上の権利の主体として、第一次的には「国民」を想定しています。

なお、日本国籍をもたない外国人が、日本国憲法上の権利の主体となるのかどうか?

判例・通説は、「権利の性質上、日本国民のみを対象としている憲法上の権利を除いて、外国人にも保障されるとしています」(最高裁判所大法廷判決昭和53.10.4マクリーン事件)。

そして通説は、権利の性質上、外国人には保障されない権利として、入国の自由・在留の権利や、社会権、参政権を挙げてきています。

外国人‐入国・在留・再入国の自由

判例・通説によれば、「国際慣習法上、入国の拒否は国家の主権として自由裁量に属することから、外国人に入国の自由はなく、それゆえ在留の権利も保障されない」(最高裁判所大法廷判決昭和53.10.4マクリーン事件)としています。

したがって、「外国人には日本国外へ一時旅行する自由は保障されず、再入国の自由も保障されない」(最高裁判所第一小法廷判決平成4.11.16森川キャサリーン事件)としているのです。

外国人が憲法上の権利の主体としての地位を認められるのは、日本に入国してからであるとすれば、入国の自由は保障されないことになります。

また、在留の権利や再入国の自由も、憲法上の権利としては保障されないことになります。

特別永住者や定住外国人については、少なくとも憲法上の国民に準ずる者と考えるべきであり、入国の自由が問題になることはありません。それゆえ在留の権利も当然有する以上、再入国の自由も保障されることになります。

外国人-社会権

通説によれば、社会権は第一次的には自己の所属する国家により保障されるべきものです。

しかし、法律により外国人に社会権を保障することは許されるものです。

外国人-参政権-選挙権

「外交・国防などを扱う国政と異なり、住民の日常生活に密接に関連する事務を扱う地方政治においては定住外国人に選挙権を付与することは、立法政策の問題であるとする」説が近年有力となってきています。

最高裁も傍論(※)ながら同様の見解を示しています(最高裁判所第三小法廷判決平成7.2.28)。

※傍論:判決のなかで述べられた付随的な意見のこと。

外国人-参政権―公務就任権

公務員になる資格である公務就任権について、「公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員」は日本国民に限るとされていました(政府の公定解釈)。

しかし、公務員といっても、「政策決定に従事する公務員」と、それを「執行する公務員」とは、裁量の範囲が異なり、国民主権原理との関係で質的に区別されると考えられています。

「執行する公務員」の資格は、憲法22条1項の職業選択の自由として考えることになります。

外国人-参政権-昇格差別

公務就任を前提に、外国人であることを理由とした昇格差別があります。

最高裁判所は、『国民主権の原理から日本国民が就任することが想定される「公権力行使等地方公務員の職」と「これに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職」とを包含する「一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ること」も裁量の範囲内であり、このことは在日韓国人等の特別永住者についても異ならない』と判示しています(最高裁判所大法廷判決平成17.1.26東京都管理職選考受験訴訟)。

外国人-自由権-経済的自由権

職業の自由や財産権等の経済的自由権には、現行法上いくつかの制限があるものの合理的な理由があり、合憲と解されています。

外国人-自由権-精神的自由権

精神的自由権については、「政治活動の自由を除き、外国人も日本人と同様に保障される」とされています。

外国人-自由権-政治活動の自由

政治活動の自由は、憲法21条の表現の自由により保障されるとされていますが、参政権的側面ももっています。

しかし、政治活動は参政権そのものではないこと、外国人の政治的見解も日本の民主主義において有益であることから、政治活動の自由も外国人に保障すべきであるとされています。

最高裁判所は、在留中の政治活動(ベトナム反戦運動等)を理由とした在留期間更新の不許可処分が争われたマクリーン事件において、『政治活動の自由についても、「わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動」などを除いて外国人にも保障されるとしたが、外国人に在留の権利が保障されていない以上、その保障は「外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎない」として、憲法上の権利行使を裁量の範囲内とした』のです(最高裁判所判決昭和53.10.4マクリーン事件)。


憲法についての基本的な事項について、教科書的に簡潔に説明しています。基礎的な事項を少ない時間で復習していただき、過去問を解き、さらに基本的な事項を復習してください。交互に繰り返し活用することによって、理解力が増強されるのではないかと思います。

行政書士・宅地建物取引士・終活アドバイザー 白神英雄

※誤りなどがありましたらめーるにてご連絡ください。

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