行政書士試験の行政法チェック「行政代執行法」

 行政法チェック
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行政書士試験の過去問題から行政法「行政代執行法」の重要問題をピックアップしています。
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過去問題を見る限りでは、あまり理屈を深く掘り下げた問題はないようです。判例や条文を中心にそのポイントをまずは覚えてください。

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行政書士試験の行政法チェック「行政代執行法」

1.(問題文○)代執行に要した費用については、義務者に対して納付命令を発出したのち、これが納付されないときは、国税滞納処分の例によりこれを徴収することができる。

《関係条文》
行政代執行法2条
 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
行政代執行法5条 代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもつてその納付を命じなければならない。
行政代執行法6条1項 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。

2.(問題文○)代執行を行うにあたっては、原則として、行政代執行法所定の戒告および通知を行わなければならないが、これらの行為について、義務者が審査請求を行うことができる旨の規定は、同法には特に置かれていない。

《解説》
※戒告・通知を行う「原則」は3条1項と3条2項、戒告・通知を行わないことができる例外は3条3項です。
【原則・戒告】行政代執行法3条1項 前条(※行政代執行法2条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
【原則・通知】行政代執行法3条2項 義務者が、前項(※行政代執行法3条1項)の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。
【例外】行政代執行法3条3項 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続(※行政代執行法3条1項よる戒告・同3条2項による通知)をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。

※戒告・通知という行為について、義務者が審査請求を行うことができる旨の規定は、行政代執行法には特に置かれていない、ということは、そのとおりです。

※しかし、行政不服審査法は、原則として、すべての行政処分を不服申立ての対象とする一般概括主義を採用しているため、戒告・通知は、行政代執行法に基づく行政処分であり、行政不服審査法の不服申立て、さらに、行政事件訴訟法の抗告訴訟(取消訴訟)の対象とはなります。

※行政不服審査法の行政庁の処分と行政事件訴訟法の行政庁の処分は、同じ意味で使われています。

《関係条文》
行政不服審査法
1条1項 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
1条2項 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
行政事件訴訟法
3条1項 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
3条2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

3.(問題文×)行政上の義務の履行確保に関しては、 行政代執行法の定めるところによるとした上で、 代執行の対象とならない義務の履行確保については、執行罰、直接強制、その他民事執行の例により相当な手段をとることができる旨の規定が置かれている

【正しくは】行政上の義務の履行確保に関しては、【別に法律で定めるものを除いては、】行政代執行法の定めるところによるとした上で、【代執行のみを定め、】代執行の対象とならない義務の履行確保については、執行罰、直接強制、その他民事執行の例により相当な手段をとることができる旨の規定【は置かれていない】。

《解説》
※一般法として行政代執行法があるとはいえ、行政代執行法は、代執行として、他人が代わって行うことができる代替的作為義務について、これを履行しない義務者に代わって行政庁が行い、その費用を義務者から徴収する制度を定めているのみです。

※行政上の強制徴収については、国税徴収法が定めています。

※執行罰、直接強制は個別法で特に定められた場合にのみ認められることになっています。

※その他民事執行の例により相当な手段をとることができる旨の規定とは、裁判所の審判の対象となるには法律に「特別の規定」がある場合に限り提起することが許される、とされている「特別の規定」のことだと思われます。

※つまり、「国又は 地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらず,これを認める特別の規定もないから,不適法というべきである、とする最高裁判所判決平成14.7.9の判例があります。

《関係条文》
行政代執行法1条
 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律(※行政代執行法)の定めるところによる。
行政代執行法2条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

4.(問題文×)代執行の実施に先立って行われる戒告および通知のうち、戒告においては、当該義務が不履行であることが、次いで通知においては、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは代執行をなすべき旨が、それぞれ義務者に示される。

【正しくは】代執行の実施に先立って行われる戒告および通知のうち、戒告においては、【相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を】、次いで通知においては、【指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額が】、それぞれ義務者に示される。

《関係条文》
行政代執行法3条1項
 前条(※行政代執行法2条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
行政代執行法3条2項 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。

5.(問題文×)代執行の実施に当たっては、その対象となる義務の履行を督促する督促状を発した日から起算して法定の期間を経過してもなお、義務者において当該義務の履行がなされないときは、行政庁は、戒告等、行政代執行法の定める代執行の手続を開始しなければならない。

【正しくは】代執行の実施に当たっては、【】行政庁は、戒告等、行政代執行法の定める代執行の手続を開始しなければならない。

《関係条文》
行政代執行法3条1項
 前条(※行政代執行法2条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
行政代執行法3条2項 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。

《解説》
※その対象となる義務の履行を督促する督促状を発した日から起算して法定の期間を経過してもなお、義務者において当該義務の履行がなされないときは、行政庁は、戒告等、同法の定める代執行の手続を開始しなければならない、という規定は行政代執行法には存在しません。

※行政上の強制徴収について定める国税徴収法には、このような規定が存在します。

《参考》
国税徴収法 (差押の要件)
国税徴収法47条1項 次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一号 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないとき。
二号 納税者が国税通則法37条1項各号(督促)に掲げる国税をその納期限までに完納しないとき。

行政代執行法は、1条から6条までの法律です。全文を掲載します。

行政代執行法 第1条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。

第2条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

第3条1項 前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
第3条2項 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。
第3条3項 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。

第4条 代執行のために現場に派遣される執行責任者は、その者が執行責任者たる本人であることを示すべき証票を携帯し、要求があるときは、何時でもこれを呈示しなければならない。

第5条 代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもつてその納付を命じなければならない。

第6条1項 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
第6条2項 代執行に要した費用については、行政庁は、国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を有する。
第6条3項 代執行に要した費用を徴収したときは、その徴収金は、事務費の所属に従い、国庫又は地方公共団体の経済の収入となる。

復習用-記憶の整理のため、正しくは、のみを掲載

1.(問題文○)代執行に要した費用については、義務者に対して納付命令を発出したのち、これが納付されないときは、国税滞納処分の例によりこれを徴収することができる。

2.(問題文○)代執行を行うにあたっては、原則として、行政代執行法所定の戒告および通知を行わなければならないが、これらの行為について、義務者が審査請求を行うことができる旨の規定は、同法には特に置かれていない。

3.【正しくは】行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、行政代執行法の定めるところによるとした上で、代執行のみを定め、代執行の対象とならない義務の履行確保については、執行罰、直接強制、その他民事執行の例により相当な手段をとることができる旨の規定は置かれていない。

4.【正しくは】代執行の実施に先立って行われる戒告および通知のうち、戒告においては、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、次いで通知においては、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額が、それぞれ義務者に示される。

5.【正しくは】代執行の実施に当たっては、行政庁は、戒告等、行政代執行法の定める代執行の手続を開始しなければならない。


【白神英雄/行政書士・行政書士試験アドバイザー】
参考文献:「行政法」第5版/櫻井敬子他(弘文堂)
法律学小辞典第5版(有斐閣)・判例六法(有斐閣)

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