203#土地や建物の利用制限について確認する。-都市計画法、建築基準法、その他の法令による制限-

不動産売買取引アドバイザー 不動産売買取引を知る
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「土地や建物を買いたい」、「この物件は良さそうだ」、という場合、その土地や建物が、あなたが描いている目的や用途に使用できるのかどうか、ということが重要になってきます。つまり、いろいろな法律によって目的や利用できる用途に制限があります。いわゆる法令上の制限というものです。国や都道府県、市町村によって制限をしているのです。知らずに買ってしまうと後で後悔することにもなります。
今回は重要事項説明の対象となっている「都市計画法・建築基準法・その他の法令による制限」をご紹介します。
ご自身で調べるのも大変です。宅地建物取引業者に売買の仲介を依頼しているときは、重要事項ですので、宅建業者に確認してから購入計画を進めて下さい。

都市計画法と建築基準法との関係

用途地域は「都市計画法」に定められていますが、用途制限に関する一つ一つの制限の内容については「建築基準法」に定められています。

都市計画法は、計画された都市をつくるための都市計画の内容や規制内容を示した法律です。

都市計画を定めるエリアを「都市計画区域」に、そして、それ以外のエリアを「都市計画区域外」として分けられています。

「都市計画区域」を、さらに細かく「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引区域(ひせんひきくいき)」の3つに分けて計画します。

また、都市計画区域外で、そのまま自由勝手に開発や建設が行われると、将来、都市としての整備をするときに支障が生じる恐れがあると認められる区域が「準都市計画区域」として指定されます。

それぞれの区域の特色は、

  • 市街化区域:すでに市街地を形成している区域(既成市街地)と今後10年以内に優先的・計画的に市街化を図る区域
  • 市街化調整区域:市街化が進まないように抑える区域、人が住むための街づくりを行う予定のない区域。農地や森林を守ることに重点が置かれ、許可を得た場合を除き、原則として建物を建築することができない区域
  • 非線引区域:市街化区域と市街化調整区域に分けられていない都市計画区域

となります。

用途地域と制限

市街化区域内は、土地の利用の方法(用途)によって住宅地、商業地、工業地の大きく3つに分けられますが、さらに細かく分類した13種類の地域に分けられます。これが「用途地域」です。

市街化区域だけでなく、「準都市計画区域」「非線引区域」も用途地域が定められることがあります。

用途地域は「都市計画法」に定められていますが、用途制限に関する一つ一つの制限の内容は「建築基準法」で定められています。

建築基準法によって、それぞれの用途地域で建築できる建物の種類が細かく規定されているのです。

その種類と制限内容は、

  1. 第一種低層住居専用地域:低層住宅のための地域で、小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられる
  2. 第二種低層住居専用地域:主に低層住宅のための地域で、小中学校などのほか、150㎡までの一定のお店などが建てられる
  3. 第一種中高層住居専用地域:中高層住宅のための地域で、病院・大学・500㎡までの一定のお店などが建てられる
  4. 第二種中高層住居専用地域:主に中高層住宅のための地域で、病院・大学などのほか、1500㎡までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられる
  5. 第一種住居地域:住居の環境を守るための地域で、3000㎡までの店舗・事務所・ホテルなどは建てられる
  6. 第二種住居地域:主に住居の環境を守るための地域で、店舗・事務所・ホテル・カラオケボックスなどは建てられる
  7. 田園住居地域:都市部における貴重な田園風景とそれがもたらす周辺の良好な低層住宅の環境を守る地域で、その地域で生産された農産物を使用する場合は500㎡までのお店が建てられる
  8. 準住居地域:道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域
  9. 近隣商業地域:まわりの住民が日用品の買物などをするための地域で、住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられる
  10. 商業地域:銀行・映画館・飲食店・百貨店などが集まる地域で、住宅や小規模の工場も建てられる
  11. 準工業地域:主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域で、危険性・環境悪化が大きい工場のほかはほとんど建てられる
  12. 工業地域:どんな工場でも建てられる地域で、住宅やお店は建てられるが、学校・病院・ホテルなどは建てられない
  13. 工業専用地域:工場のための地域で、どんな工場でも建てられるが、住宅・お店・学校・病院・ホテルなどは建てられない

となっています。

その他の地域地区と制限

用途地域も地域地区の一つですが、ここでの地域地区は、用途地域を含めた都市計画区域内の土地を、どのような用途に利用するべきか、どの程度利用するべきかなどを定めている21種類に分類したものです。

用途地域を除くと地域地区は20種類ということになります。

次の1.~20.の制限などについて、購入予定の物件の所在地において、適用を受けるか否かを調べることが必要です。

用途地域を除いた「地域地区」は、

  1. 特別用途地区:全国一律の用途地域に分類するだけでなく、地方公共団体の条例により用途地域による建築物の制限を強化(もしくは緩和)することができるようにした地区
  2. 特定用途制限地域:準都市計画区域もしくは非線引区域において、良好な住環境をつくるため、または良好な住環境を保っていくため、住環境にそぐわない建物を制限する
  3. 特例容積率適用地区:容積率の限度からみて未利用となっている容積の活用を促進して、土地の高度利用を図るために定める地区
  4. 高層住居誘導地区:都心に高層住宅の建築を誘導することで、居住人口の都心回帰を促すことを目的とする地区
  5. 高度地区・高度利用地区:高度地区とは建築物の高さを定めた地区のことで、高度利用地区とは住宅密集市街地などにおいて、細分化された敷地を統合し一体的な再開発を行なうことで、高層ビル群を建てられるようにした地区
  6. 特定街区:都市基盤の整った街区などにおいて、細分化された敷地を統合し一体的な再開発を行なうことで、高層ビル群を建てられるようにした地区
  7. 都市再生特別地区・居住環境向上用途誘導地区・特定用途誘導地区:用途制限や建ぺい率・容積率・高さの最高限度・斜線制限・日影規制などのあらゆる規制を除外でき、新たに定めることができる地区
  8. 防火地域・準防火地域:火災の被害が起きやすい地域、そして火災を防ぐために予防しなければならない地域に定められる
  9. 特定防災街区整備地区:市街地において老朽化した木造住宅等が密集し、地震やそれに伴う火災等の災害に対して、延焼防止や特定防災機能(近隣住民が避難するための整備された道路や避難公園等)が確保されていない地区に、防災機能を確保するために定められる地区
  10. 景観地区・準景観地区:市街地の良好な景観を保存・継承していきたい地区に定められる
  11. 風致地区:都市に残された水や緑など、良好な自然的景観を守り、都市における風致を維持するために定められる地区
  12. 駐車場整備地区:駐車場を設けることが必要とされた地区
  13. 臨港地区:港湾の管理運営を円滑に行うために、取扱う貨物に応じて目的別に商港区等の分区を指定し、各分区における構造物を制限する地区
  14. 歴史的風土特別保存地区:古都の歴史的風土を保存するために指定される区域
  15. 第1種歴史的風土保存地区・ 第2種歴史的風土保存地区:飛鳥時代の遺跡等の歴史的遺産を保存するために、奈良県明日香村内に指定されている地区。明日香村全域を2つに区分して定めており、特に重要な部分といえる高松塚古墳、石舞台古墳などの周辺地区が第1種歴史的風土保存地区、その他の地区が第2種歴史的風土保存地区となっている
  16. 特別緑地保存地区:寺社の鎮守の森や歴史的な建築物の屋敷林などの市街地に残る貴重な林など、都市にある良好な自然的環境となる緑地において、建築行為など一定の行為の制限を設け保全する地区
  17. 流通業務地区:流通業務施設(トラックターミナル・鉄道の貨物駅・卸売市場・倉庫など)以外の施設の建設を制限する地区
  18. 生産緑地地区:市街化区域内の農地を残すために、売買や建築を制限する地区
  19. 伝統的建造物群保存地区:城下町、宿場町、門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存を図るための地区
  20. 航空機騒音障害防止地区・航空機騒音障害防止特別地区:成田空港周辺の航空機の著しい騒音が及ぶ地域に指定され、住宅等の新築、増改築を行う場合は、防音工事が義務づけられている

となっています。

地域地区も「都市計画法」に定められていますが、制限に関する一つ一つの規制の内容については「建築基準法」や、その他の法律(たとえば、特別用途地区は条例、都市再生特別地区・居住環境向上用途誘導地区・特定用途誘導地区は都市再生特別措置法、特定防災街区整備地区は密集市街地整備法など)に定められています。

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地区計画等と制限

用途地域やその他の地域地区によって制限できるとはいえ、ほとんどが全国共通の画一的な制限です。そこで、 より小さな範囲の地区レベルで、その地域の特性に応じた詳細な都市計画が必要となるときに定められるものが「地区計画」です。

たとえば、地区計画で、敷地面積の最低限度・建ぺい率・壁面後退・高さの制限・色彩や緑化などに調和を持たせ、地区レベルで統一性のあるまちづくりを目指す、というような場合です。

「地区計画」だけでなく、それぞれの目的に即した「防災街区整備地区計画」「沿道地区計画」「集落地区計画」「歴史的風致維持向上地区計画」 があり、5つをまとめて「地区計画等」といいます。

地区計画等の種類と制限内容は、

  1. 地区計画:地区計画とは住民が主体となってつくる、建物や道路、公園等に関する独自のルール
  2. 防災街区整備地区計画:密集市街地における火災の延焼拡大を抑制し、まちの不燃化を図るため、建物の構造に一定の基準を設けて、燃えにくい建物にするなど防火性能を高めることを目的とした地区計画
  3. 沿道地区計画:幹線道路のうち交通騒音が著しく沿道に相当数の住居が密集している道路(沿道整備道路)の沿道の地区について、緑地帯などの緩衝帯の整備、沿道の建築物の建築の規制などにより、騒音被害の防止を図ろうとする地区計画
  4. 集落地区計画:市街化調整区域・非線引区域の農業振興地域内の農村集落において、農家の兼業化や農家と非農家の混在化に伴う虫食い的な農地転用等による営農条件の悪化や建築物のバラ建ちの防止を図ろうとする地区計画
  5. 歴史的風致維持向上地区計画:歴史的風致にふさわしい建築物等の整備・利活用と市街地の保全を総合的に行なうことを目的とする地区計画

となっています。

地区計画等も「都市計画法」に定められていますが、制限に関する一つ一つの規制の内容については、地方自治体の条例で定められています。

建築基準法が定めている各種の制限

建築基準法が定めている制限の項目のみご紹介しておきます。

調査の結果、あてはまる制限があれば重要事項説明の対象事項となります。

その時に詳しくお聞きください。

  1. 災害危険区域内での建築物の建築に関する制限
  2. 用途地域内での建築物及び工作物の建築制限
  3. 特別用途地区内での建築物・工作物の建築の制限
  4. 特定用途制限地域内における建築物・工作物の用途の制限
  5. 用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、都市再生特別地区内における建築物・工作物の敷地、構造等に対する制限
  6. 特例容積率適用地区内における建築物の容積率の特例に係る制限
  7. 特例容積率適用地区内における建築物の高さの限度の制限
  8. 高層住居誘導地区内の建築制限
  9. 高度地区内における建築物の高さの制限
  10. 高度利用地区内における建築物の容積率、建ぺい率等の制限
  11. 特定街区内における建築物の容積率等の制限
  12. 都市再生特別地区内の建築物に関する制限
  13. 居住環境向上用途誘導地区内の建築物に関する制限
  14. 特定用途誘導地区内における建築物の容積率の最低限度、建築物の建築面積の最低限度、建築物の高さの最高限度の制限、用途規制の緩和
  15. 防火地域・準防火地域内における建築物の制限
  16. 特定防災街区整備地区内の建築物に関する制限
  17. 景観地区内における建築物の高さ、壁面の位置、敷地面積の制限
  18. 地区計画等の区域内における制限
  19. 公告認定対象区域内における同一敷地内認定建築物以外の建築物の位置、構造の認定等の制限

都市計画法、建築基準法以外の法律に基づく制限

法律名のみご紹介しておきます。

調査の結果、あてはまる制限があれば重要事項説明の対象事項となります。

その時に詳しくお聞きください。

□古都保存法
□都市緑地法
□生産緑地法
□特定空港周辺特別措置法
□景観法
□土地区画整理法
□大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法
□地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律
□被災市街地復興特別措置法
□新住宅市街地開発法
□新都市基盤整備法
□旧市街地改造法
□首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律
□近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律
□流通業務市街地整備法
□都市再開発法
□沿道整備法
□集落地域整備法
□密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律
□地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律
□港湾法
□住宅地区改良法
□公有地拡大推進法
□農地法
□宅地造成等規制法
□マンションの建替え等の円滑化に関する法律
□長期優良住宅の普及の促進に関する法律
□都市公園法
□自然公園法
□首都圏近郊緑地保全法
□近畿圏の保全区域の整備に関する法律
□都市の低炭素化の促進に関する法律
□水防法
□下水道法
□河川法
□特定都市河川浸水被害対策法
□海岸法
□津波防災地域づくりに関する法律
□砂防法
□地すべり等防止法
□急傾斜地法
□土砂災害防止対策推進法
□森林法
□森林経営管理法
□道路法
□踏切道改良促進法
□全国新幹線鉄道整備法
□土地収用法
□文化財保護法
□航空法
□国土利用計画法
□核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
□廃棄物の処理及び清掃に関する法律
□土壌汚染対策法
□都市再生特別措置法
□地域再生法
□高齢者・障害者等の移動の円滑化の促進に関する法律
□災害対策基本法
□東日本大震災復興特別区域法
□大規模災害からの復興に関する法律
□重要土地等調査法

などです。

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仲介を依頼しているときは、宅地建物取引業者に確認を!

宅地建物取引業者に売買の仲介を依頼しているときは、以上の確認については、契約までの間に宅地建物取引士が重要事項説明として説明しなければならない事項とされています。

ご自身で調べるのも大変です。契約するかどうか検討中であっても、重要事項ですので、宅建業者に確認するようにして下さい。

都市計画法・建築基準法・その他の法令上の制限の内容について、よくわからないというときは、その物件が所在する市区町村役場の担当課か専門家(建築士・仲介を依頼している宅地建物取引業者、宅地建物取引士など)に相談して下さい。


【白神英雄/行政書士・宅地建物取引士・不動産売買取引アドバイザー】
【白神英雄/ココチ不動産㈱所属エージェント】 https://cocochi.org/pg3342218.html
ココチ不動産㈱は、お住まいになる土地や建物、お店・会社などの事業用土地や建物などの不動産売買取引の仲介業としてサービス展開。また、リフォーム・リノベーションのご相談もお受けすることができます。施工は、協力会社にて行います。
ご相談・お問い合わせは、白神英雄/エージェント shiragami@cocochi.org までお願いします。

※Facebookのグループ「不動産売買取引を知る」を2022(R4)年11月1日に開設しました。 不動産売買取引について興味、関心がある方やこれから土地や建物を売りたい、買いたいとお考えの方の皆様の参加をお待ちしています。https://www.facebook.com/groups/424763309638937

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