行政書士試験の憲法チェック「私法上の法律関係における憲法の効力に関する判例」

 憲法チェック
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行政書士試験の過去問題から憲法「私法上の法律関係における憲法の効力に関する判例」の重要問題をピックアップしています。重要ポイントとしてチェックしてください。
スマートホンを使えば通勤や通学の時間にチェックすることができます。
過去問題を見る限りでは、あまり理屈を深く掘り下げた問題はないようです。判例のポイントをまずは覚えてください。

興味のある方は、判例六法や判例百選などの書籍も参考にしてください。インターネットで検索をしてみるのもよいと思います。詳しく解説した記事があります。

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行政書士試験の憲法チェック「私法上の法律関係における憲法の効力に関する判例」

1.(問題文×)私人間においては、一方が他方より優越的地位にある場合には私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができるが、それ以外の場合は、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。

【正しくは】私人間においては、【】<私法の一般規定を通じ憲法の効力を【間接的に】及ぼすことができるが、【】私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。

※私法の一般規定とは、たとえば民法90条(公序良俗)や709条(不法行為)があげられる。
※一方が他方より優越的地位にある場合には 直接及ぼすことができる、ということはない。

参考:私人間においては、憲法の人権規定を直接適用するのではなく、間接的に適用する考え方をとっている。これを間接適用説といい、民法90条(公序良俗)や709条(不法行為)といった私法の一般条項を通して憲法の人権規定の適用をしようとするものである。

 

民法90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

最高裁大法廷判決昭和48.12.12

2.(問題文×)私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て、学則を制定することができるが、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは憲法19条に反し許されない

【正しくは】私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て、学則を制定することができ、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは【公序良俗に違反するものではない】。

※私立学校とその学生という私人間には憲法19条は直接適用されるものではない。

憲法19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
民法90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。


最高裁判所判決昭和49.7.19

3.(問題文×)性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に直接及ぶことになるので、男女間で定年に差異を設けることについて経営上の合理性が認められるとしても、女性を不利益に扱うことは許されない

【正しくは】性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に【間接的に】及ぶことになるので、男女間で定年に差異を設けることについて経営上の合理性が認められる【ときは】、女性を不利益に扱うことは【許される】。

※憲法14条1項の効力は労働関係に直接に及ぶものではない。民法90条(公序良俗)の規定により無効である。
※最高裁判所判決昭和56.3.24判決要旨:会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である。

憲法14条1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
民法90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

4.(問題文〇)自衛隊基地建設に関連して、国が私人と対等な立場で締結する私法上の契約は、実質的に公権力の発動と同視できるような特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けない。

※私法の適用を受けるにすぎない。

憲法9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。


最高裁判所判決平成1.6.20

5.(問題文×)企業者が、労働者の思想信条を理由に雇い入れを拒むことは、思想信条の自由の重要性に鑑み許されないが、いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱いがなされてもこれを当然に違法とすることはできない

【正しくは】企業者が、労働者の思想信条を理由に雇い入れを【拒んでも当然に違法とすることはできない】が、いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱い【をすることは違法とされている】。

労働基準法3条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。


最高裁判所大法廷判決昭和48.12.12

復習用-記憶の整理のため、問題文○・正しくは、のみを掲載

1.【正しくは】私人間においては、<私法の一般規定を通じ憲法の効力を間接的に及ぼすことができるが、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。

2.【正しくは】私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て、学則を制定することができ、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは公序良俗に違反するものではない。

3.【正しくは】性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に間接的に及ぶことになるので、男女間で定年に差異を設けることについて経営上の合理性が認められるときは、女性を不利益に扱うことは許される。

4.(問題文〇)自衛隊基地建設に関連して、国が私人と対等な立場で締結する私法上の契約は、実質的に公権力の発動と同視できるような特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けない。

5.【正しくは】企業者が、労働者の思想信条を理由に雇い入れを拒んでも当然に違法とすることはできないが、いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱いをすることは違法とされている。


【白神英雄/行政書士・行政書士試験アドバイザー】
 参考文献:有斐閣「憲法学読本」第3版・判例六法(有斐閣)

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