行政書士試験の行政法チェック「行政行為の職権取消と撤回の事例」

 行政法チェック
この記事は約6分で読めます。

行政書士試験の過去問題から行政法「行政行為の職権取消と撤回の事例」の重要問題をピックアップしています。重要ポイントとしてチェックしてください。
スマートホンを使えば通勤や通学の時間にチェックすることができます。
過去問題を見る限りでは、あまり理屈を深く掘り下げた問題はないようです。判例や条文を中心にそのポイントをまずは覚えてください。

【行政書士試験に受かろう】を随時更新しています。
ご希望の方へ、更新情報をお送りします。gyosho@shiragami.jp へメールアドレス(件名なし)を送って下さい。随時、更新情報などをお送りします。

※Facebookのグループ「行政書士試験に受かろう」を2022(令和4年)4月27日に開設しました。行政書士試験について興味、関心がある方や行政書士試験の受験生の皆様の参加をお待ちしています。URL:https://www.facebook.com/groups/2226745574149743

行政書士試験の行政法チェック「行政行為の職権取消と撤回の事例」

設例:甲は、旅館業法3条1項に基づく許可(以下「営業許可」という。)を得て、旅館業を営んでいたが、同法によって義務付けられた営業者の講ずべき衛生措置を講じなかったことを理由に、所轄都道府県知事から、同法8条1項に基づく許可の取消処分(以下「取消処分」という。)を受けた。

 

該当条文:旅館業法
第3条1項 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事‥‥の許可を受けなければならない。(以下略)
第8条1項 都道府県知事は、営業者が、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき‥‥は、同条(「旅館業法第3条」のこと)第1項の許可を取り消〔す〕‥‥ことができる。(以下略)

この取消処分は講学上の撤回にあたる行政行為である

1.(問題文×)甲に対してなされた取消処分は、違法になされた営業許可を取り消し、法律による行政の原理に反する状態を是正することを目的とする行政行為である。

【正しくは】甲に対してなされた取消処分は、【行政行為の適法な成立後、後発的な事情の変化によりその行政行為を維持することができなくなった場合に行われる】行政行為である。

※講学上の「撤回」にあたる行政行為である。違法になされた営業許可を取り消し、法律による行政の原理に反する状態を是正することを目的とする行政行為は、講学上の「取消(職権取消)である。

2.(問題文〇)甲に対してなされた取消処分は、営業許可がなされた時点では瑕疵がなかったが、その後においてそれによって成立した法律関係を存続させることが妥当ではない事情が生じたときに、当該法律関係を消滅させる行政行為である。

※講学上の撤回にあたる行政行為である。
※表現は異なるが、1.と同じである。

3.(問題文×)旅館業法8条が定める許可の取消は、営業者の行為の違法性を理由とするものであるから、行政行為の職権取消にあたる。

【正しくは】旅館業法8条が定める許可の取消は、営業者の行為の違法性を理由とするものであるから、行政行為の【撤回】にあたる。

※表現は異なるが、1.2.と同じである。

4.(問題文×)甲に対してなされた取消処分によって、甲が有していた営業許可の効力は、それがなされたときにさかのぼって効力を失うことになる。

【正しくは】甲に対してなされた取消処分によって、甲が有していた営業許可の効力は、【将来に向かって】失うことになる。

※講学上の撤回にあたる行政行為であり、甲が有していた営業許可の効力は、将来に向かって失う。
※甲が有していた営業許可の効力が、それがなされたときにさかのぼって効力を失うことになるのは、講学上の取消(職権取消)の場合である。

5.(問題文〇)甲に対してなされた取消処分が取消判決によって取り消された場合に、甲は、営業許可がなされた状態に復し、従前どおり営業を行うことができる。

※取消判決によって取消処分が当初からなかったのと同じ状態になり、営業許可がなされた状態に回復することになる。

6.(問題文×)甲に対してなされた取消処分は、いったんなされた営業許可を前提とするものであるから、独立の行政行為とはみなされず、行政手続法が規定する「処分」に当たらない

【正しくは】甲に対してなされた取消処分は、いったんなされた営業許可を前提とするものである【が、独立の行政行為であるので、】行政手続法が規定する「処分」に【当たる】。

行政手続法2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
行政手続法2条2号 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
行政手続法2条4号 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、(略)。

参考:地方公共団体の条例・規則に基づく場合は、行政手続法は適用除外となるが、国の法律を根拠に処分がなされる場合には行政手続法が適用される。この問題の場合は、所轄都道府県知事の処分であるが、国の法律である旅館業法を根拠とする処分であるので、行政手続法が適用される。

ポイント:「行政行為の撤回」という用語は、一般的には講学上の概念であり、条文上「取消し」と表現されるのが通常である。
講学上とは、行政法の理論としてはという意味あいである。
旅館業法8条にいう「取り消し」も「講学上の撤回」という意味である。
行政行為の取消(職権取消)ではない。
行政行為の撤回と行政行為の取消(職権取消)とを区別すること。

復習用-記憶の整理のため、問題文○・正しくは、のみを掲載

1.【正しくは】甲に対してなされた取消処分は、行政行為の適法な成立後、後発的な事情の変化によりその行政行為を維持することができなくなった場合に行われる行政行為である。

2.(問題文〇)甲に対してなされた取消処分は、営業許可がなされた時点では瑕疵がなかったが、その後においてそれによって成立した法律関係を存続させることが妥当ではない事情が生じたときに、当該法律関係を消滅させる行政行為である。

3.【正しくは】旅館業法8条が定める許可の取消は、営業者の行為の違法性を理由とするものであるから、行政行為の撤回にあたる。

4.【正しくは】甲に対してなされた取消処分によって、甲が有していた営業許可の効力は、将来に向かって失うことになる。

5.(問題文〇)甲に対してなされた取消処分が取消判決によって取り消された場合に、甲は、営業許可がなされた状態に復し、従前どおり営業を行うことができる。

6.【正しくは】甲に対してなされた取消処分は、いったんなされた営業許可を前提とするものであるが、独立の行政行為であるので、行政手続法が規定する「処分」に当たる。


【白神英雄/行政書士・行政書士試験アドバイザー】
 参考文献:弘文堂「行政法」第5版・判例六法(有斐閣)

【行政書士試験に受かろう】を随時更新しています。
ご希望の方へ、更新情報をお送りします。gyosho@shiragami.jp へメールアドレス(件名なし)を送って下さい。随時、更新情報などをお送りします。

誤りなどがありましたら、お手数ですが、ご一報ください。

タイトルとURLをコピーしました