行政書士試験の行政法チェック「行政上の義務の履行確保」

 行政法チェック
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行政書士試験の過去問題から行政法「行政上の義務の履行確保」の重要問題をピックアップしています。重要ポイントとしてチェックしてください。
スマートホンを使えば通勤や通学の時間にチェックすることができます。
過去問題を見る限りでは、あまり理屈を深く掘り下げた問題はないようです。判例や条文を中心にそのポイントをまずは覚えてください。

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行政書士試験の行政法チェック「行政上の義務の履行確保」

1.(問題文×)即時強制とは、非常の場合または危険切迫の場合において、行政上の義務を速やかに履行させることが緊急に必要とされる場合に、個別の法律や条例の定めにより行われる簡易な義務履行確保手段をいう。

【正しくは】【直接強制】とは、非常の場合または危険切迫の場合において、行政上の義務を速やかに履行させることが緊急に必要とされる場合に、個別の法律【】の定めにより行われる【】義務履行確保手段をいう。

※即時強制の定義:即時強制とは、行政上の義務を課することなく(義務の存在を前提とせず)、行政上の目的を達するため、直接身体若しくは財産に対して有形力を行使することをいいます。

※義務の存在を前提としない即時強制は、義務履行確保手段ではないため、条例により定めることができる、と考えられています。

※直接強制の定義:直接強制とは、行政上の義務の不履行がある場合に、義務者の身体または財産に対し直接有形力を行使して、義務の実現を図ることをいいます。

※なお、直接強制は、義務履行確保手段であることから条例で定めることができない(行政代執行法1条)、とされています。

行政代執行法1条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。

2.(問題文×)直接強制は、義務者の身体または財産に直接に実力を行使して、義務の履行があった状態を実現するものであり、代執行を補完するものとして、その手続が行政代執行法に規定されている

【正しくは】直接強制は、義務者の身体または財産に直接に実力を行使して、義務の履行があった状態を実現するものである。【】

※直接強制の定義:直接強制とは、行政上の義務の不履行がある場合に、義務者の身体または財産に対し直接有形力を行使して、義務の実現を図ることをいいます。

※戦後廃止された行政執行法とは異なり、直接強制の手続は、現在の行政代執行法には規定されていません。個別法で特に認められた場合にのみ存在しています。

3.(問題文×)行政代執行法に基づく代執行の対象となる義務は、「法律」により直接に命じられ、または「法律」に基づき行政庁により命じられる代替的作為義務に限られるが、ここにいう「法律」に条例は含まれない旨があわせて規定されているため、条例を根拠とする同種の義務の代執行については、別途、その根拠となる条例を定める必要がある

【正しくは】行政代執行法に基づく代執行の対象となる義務は、「法律」により直接に命じられ、または「法律」に基づき行政庁により命じられる代替的作為義務に限られるが、ここにいう「法律」に【法律の委任に基づく条例は含まれるが、法律の委任に基づかない条例は含まれない旨】があわせて規定されているため、【法律の委任に基づかない条例で同種の義務の代執行について定めることができない】。

※行政代執行による「法律」には、「法律の委任に基づく命令、規則及び条例を含む」なっており、「法律の委任に基づく」という部分は、命令・規則・条例のすべてにかかる、と考えられています。「法律の委任に基づく条例」と「法律委任に基づかない条例」とを区別していることになります。

行政代執行法2条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

4.(問題文○)行政上の秩序罰とは、行政上の秩序に障害を与える危険がある義務違反に対して科される罰であるが、刑法上の罰ではないので、国の法律違反に対する秩序罰については、非訟事件手続法の定めるところにより、所定の裁判所によって科される。

※法律違反による秩序罰は、一般的には「過料」と呼ばれています。過料は非訟事件手続法(ひしょうじけんてつづきほう)により地方裁判所(簡易裁判所とされる場合もあります)において、過料の裁判を経て検察官の命令をもって執行されます(非訟事件手続法119条以下)。

※なお、地方公共団体は、地方公共団体の秩序罰として、地方自治法により条例または規則により5万円以下の過料を科すことができます。地方公共団体の秩序罰である過料は、地方公共団体の長(都道府県知事・市町村長)が科します。

5.(問題文×)道路交通法に基づく違反行為に対する反則金の納付通知について不服がある場合は、被通知者において、刑事手続で無罪を主張するか、当該納付通知の取消訴訟を提起するかのいずれかを選択することができる

【正しくは】道路交通法に基づく違反行為に対する反則金の納付通知について不服がある場合は、被通知者において、【反則金を納付せず、刑事訴追がされた後、刑事手続で無罪を主張するべきである】。

※道路通法違反行為のなかで比較的軽微な定型的違反行為を反則行為として、警察本部長が反則行為者に対して反則金の納付を通告し、反則行為者が任意に反則金を納付した場合には、刑事訴追が行われないという制度です。

※一旦、反則金を納付した場合には、反則金の納付通知について不服がある場合でも、刑事手続で無罪を主張するか、納付通知の取消訴訟を提起するか、のいずれかを選択することができるわけではない、ということです。

最高裁判所判決昭和57.7.15判決の要旨
①道路交通法は、通告を受けた人が、自分の意思で、通告された反則金を納付して事案を終わらせることを選んだ場合、

②通告の理由になった反則行為が成立していないことを主張して通告が適切かどうかを争って、通告に対する抗告訴訟(※行政事件訴訟法による処分の取消しの訴え)で通告の効果を覆すことは許されない。

③そう主張するなら、反則金を納付しないで、後で公訴が提起されて(※起訴されて)始まる刑事手続の中で争って、裁判所の審判を求めることを選ぶべきである。

復習用-記憶の整理のため、正しくは、のみを掲載

1.【正しくは】直接強制とは、非常の場合または危険切迫の場合において、行政上の義務を速やかに履行させることが緊急に必要とされる場合に、個別の法律の定めにより行われる義務履行確保手段をいう。

2.【正しくは】直接強制は、義務者の身体または財産に直接に実力を行使して、義務の履行があった状態を実現するものである。

3.【正しくは】行政代執行法に基づく代執行の対象となる義務は、「法律」により直接に命じられ、または「法律」に基づき行政庁により命じられる代替的作為義務に限られるが、ここにいう「法律」に法律の委任に基づく条例は含まれるが、法律の委任に基づかない条例は含まれない旨があわせて規定されているため、法律の委任に基づかない条例で同種の義務の代執行について定めることができない。

4.(問題文○)行政上の秩序罰とは、行政上の秩序に障害を与える危険がある義務違反に対して科される罰であるが、刑法上の罰ではないので、国の法律違反に対する秩序罰については、非訟事件手続法の定めるところにより、所定の裁判所によって科される。

5.【正しくは】道路交通法に基づく違反行為に対する反則金の納付通知について不服がある場合は、被通知者において、反則金を納付せず、刑事訴追がされた後、刑事手続で無罪を主張するべきである。


【白神英雄/行政書士・行政書士試験アドバイザー】
 参考文献:弘文堂「行政法」第5版/櫻井敬子他(弘文堂)
 法律学小辞典第5版(有斐閣)・判例六法(有斐閣)

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