行政書士試験の民法チェック「意思表示の事例」

 民法チェック
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行政書士試験の過去問題から民法「意思表示の事例」の重要問題をピックアップしています。重要ポイントとしてチェックしてください。
スマートホンを使えば通勤や通学の時間にチェックすることができます。 過去問題を見る限りでは、あまり理屈を深く掘り下げた問題はないようです。判例や条文を中心にそのポイントをまずは覚えてください。

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行政書士試験の民法チェック「意思表示の事例」

1.(問題文×)Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない

【正しくは】Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、C(※第三者=転得者)は、Bの詐欺につき知らず(※善意)、かつ知らなかったことにつき過失がなく(=善意無過失の第三者)、また、【対抗要件を備えていなくともよい】。

※AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消しても、善意無過失の第三者Cは、対抗要件(所有権などの登記)を備えていなくとも対抗(主張)することができる。

民法96条1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
民法96条3項 前2項(民法96条1項)の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

最高裁判所判決昭和49.9.26:第三者の範囲は、民法96条1項・3項の趣旨を考えて合理的に決めるべきで、必ずしも、所有権などの物権の転得者で、対抗要件がある人に限定する理由はない。
なお、Cは、BがAから買った甲土地を、さらに譲り受けたので、この場合のCを「転得者」(てんとくしゃ)といいます。

2.(問題文○)Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AがEの詐欺によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知っていたとき、または知らなかったことにつき過失があったときは、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

※第三者Eが詐欺を行った場合においては、相手方Bがその事実を知り(※知っていたとき=悪意)、又は知ることができた(※知らなかったことにつき過失があった)ときに限り、その意思表示を取り消すことができる。なお、相手方Bがその事実を知らなかったとき、または知らなかったことにつき過失がなかったとき(善意無過失)は、その意思表示は取り消すことができない。

民法96条1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
民法96条2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3.(問題文○)Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

※1.強迫による意思表示は取り消すことができる。
2.この取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しなければ時効によって消滅する。
3.追認することができる時とは、「取消の原因となっていた状況が消滅し」た時である。
4.しかし、この設問の場合、「畏怖(強迫)の状態が続いていた」ので、取消の原因となっていた状況が消滅したとは言い難い。
5.「取消の意思表示をしないまま10年が経過した」とあるが、強迫の状態が続いていたので、取消権は時効による消滅はしていないと思われる。
6.したがって、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

民法96条1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
民法126条 取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
民法124条1項 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。

4.(問題文×)Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったとき、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができない

【正しくは】Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AがDの強迫(※第三者Dの強迫)によって本件売買契約を締結した場合、この事実をB(相手方)が知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったとき(相手方Bの善意無過失)【にかかわらず】、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことが【できる】。

※相手方の善意無過失のときに限り取り消すことができるのは、第三者が詐欺を行った場合であって、第三者が強迫を行った場合には適用されない。

民法96条1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
民法96条2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

5.(問題文×)Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあたるため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことはできない

【正しくは】Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術に【あたらない】ため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すこと【ができる】。

※黙秘することのみでは詐術にあたらない、とされている。

民法5条1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
民法5条2項 前項(民法5条1項)の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
民法21条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
最高裁判所判決昭和44.2.13:無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まつて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法20条(現民法21条)にいう「詐術」にあたるが、黙秘することのみでは詐術にあたらない。

復習用-記憶の整理のため、問題文○・正しくは、のみを掲載

1.【正しくは】Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなくともよい。

2.(問題文○)Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AがEの詐欺によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知っていたとき、または知らなかったことにつき過失があったときは、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

3.(問題文○)Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

4.【正しくは】Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときにかかわらず、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

5.【正しくは】Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という)が締結された。Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあたらないため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことができる。


【白神英雄/行政書士・行政書士試験アドバイザー】
参考文献:民法(全)第3版潮見佳男著(有斐閣)・判例六法(有斐閣)

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