40601「譲渡制限株式でも一般承継による取得は対象外/株式の取得」行政書士試験の商法会社法

 商法会社法チェック
この記事は約8分で読めます。

このブログは、行政書士試験の過去問題から商法会社法の重要事項をピックアップし、問題文の出題意図を、いかに見つけ出すのかをメインに解説しています。つまり、いかに「ひっかけ」の部分を見つけ出すか、ということです。重要ポイントとしてチェックしてください。
スマートホンを使えば通勤や通学の時間にチェックすることができます。 条文や判例を中心にそのポイントをおさえてください。

「譲渡制限株式でも一般承継による取得は対象外」

【ポイント】

①株式会社が、「譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定め」(※譲渡制限株式の定め)を設ける場合は、定款において定めなければならない。
②しかし、「相続や会社の合併、会社分割などの一般承継による株式の取得ついて」は、譲渡制限株式の対象外とされているので、定款においても、譲渡制限株式の定めをすることができない。

【ひっかけは?】

(正)株式会社は、合併および会社分割などの一般承継による株式の取得について、定款において、当該会社の承認を要する旨の定めをすることが【できない】。

《ひっかけはここ!》
(誤)”株式会社は、合併および会社分割などの一般承継による株式の取得について、定款において、当該会社の承認を要する旨の定めをすることができる。”(過去問より引用)

【解説】

株式の譲渡は自由が原則

・株式は、自由に譲渡できるのが原則です(会社法127条)。

【条文】
(株式の譲渡)
会社法127条 株主は、その有する株式を譲渡することができる。

譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定め

・しかし、株式会社は、その発行する全部または一部の株式の内容として「譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨」を定めることができます(会社法107条1項、108条1項)。

【条文】
(株式の内容についての特別の定め)
会社法107条1項 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。
一号 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

(異なる種類の株式)
会社法108条1項 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。
四号 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定めは定款で定める

・その定めをするときは、定款で定めなければなりません(会社法107条2項、108条2項)。

【条文】
(株式の内容についての特別の定め)
会社法107条2項 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。
一号 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 次に掲げる事項
 イ 当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨

(異なる種類の株式)
会社法108条2項 株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
四号 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条(会社法107条)第2項第一号に定める事項

譲渡制限株式

・その株式を「譲渡制限株式」(会社法2条17号)とよんでいます。

【条文】
(定義)
会社法2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
17号 譲渡制限株式 株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式をいう。

譲渡制限株式の譲渡・取得承認

・譲渡制限株式を譲渡する場合、株式の譲渡人または譲受人のいずれかから、会社に対して、株式の譲渡または取得について承認を求める必要があります(会社法136条、137条1項)。

【条文】
(株主からの承認の請求)(=株式の譲渡人からの承認の請求)
会社法136条 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

(株式取得者からの承認の請求)(=株式の譲受人からの承認の請求)
会社法137条1項 譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。 

会社の承認と株主名簿の名義書換

・会社の承認(会社法139条1項、2項)がないと株式の譲受人は、株主名簿の名義書換(会社法133条1項、134条)ができません。

【条文】
(譲渡等の承認の決定等)
会社法139条1項 株式会社が(※会社法)第136条(※株主からの承認の請求)又は(※会社法)第137条第1項(※株式取得者からの承認の請求)の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2項 株式会社は、前項(※会社法139条1項)の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。

(株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録)(※名義書換)
会社法133条1項 株式を(、)当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者(当該株式会社を除く。以下この節において「株式取得者」という。)は、当該株式会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。

会社法134条 前条(※会社法133条)の規定は、株式取得者が取得した株式が譲渡制限株式である場合には、適用しない。
ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得することについて(※会社法)第136条(※株主からの承認の請求)の承認を受けていること。
二 当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得したことについて(※会社法)第137条第1項(※株式取得者からの承認の請求)の承認を受けていること。
※承認を受けていれば、会社法133条1項が適用され、名義書換の請求ができるということです。

株式の譲渡の対抗要件

・そのため、株式を取得したことを株式会社や第三者に対抗(主張)できないのです(会社法130条1項)。

【条文】
(株式の譲渡の対抗要件)
会社法130条1項 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。

一般承継による株式の取得は会社の承認は不要

・その結果、会社は、この譲渡承認を拒絶することによって、会社にとって好ましくない者が株主となることを避けることができるのです。

しかし、相続その他一般承継の場合(相続のほか会社の合併や会社分割による株式の承継)には、譲渡制限株式であっても、会社の承認を得ることなく名義書換の請求ができるとされています(会社法134条ただし書き四号)。

【条文】
(株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録)(※名義書換)
会社法133条1項 株式を(、)当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者(当該株式会社を除く。以下この節において「株式取得者」という。)は、当該株式会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。

会社法134条 前条の規定(※会社法133条1項)は、株式取得者が取得した株式が譲渡制限株式である場合には、適用しない。
ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
四号 当該株式取得者が相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者であること。
※会社法133条1項が適用され、会社の承認を得ることなく名義書換の請求ができるということです。

一般承継による株式の取得の注意点

・また、一般承継による株式の取得ついては、譲渡制限株式の対象外とされているので、定款においても、譲渡制限株式の定めをすることができないとされています。

・よって、株主が死亡した場合、会社は、その相続人を株主として拒絶することはできないことになります。

・そのため、相続人から株主名簿書換の請求があった場合、会社はその請求を拒絶することができないのです。

参考までに、

・なお、故人の残した遺言によって、その遺産の一部または全てを譲ることを「遺贈(いぞう)」といい、遺贈による取得の場合は、相続人であったとしても特定承継にあたるため、会社の承認を得ることが必要になります。

・一般承継とは、相続によって株式を承継した相続人や、会社の合併・会社分割によって株式を承継した場合をいいます。そのため一般承継は、包括承継とも呼ばれます。承継する対象となる人が持っている物や権利をそっくりそのまま受け継ぎます。

・特定承継とは、一般承継以外の承継取得をいいます。一般承継に対し、売買や贈与、遺贈による特定の物や権利のみを受け継ぐという違いがあります。


【白神英雄/行政書士・行政書士試験アドバイザー】

参考文献・引用:基礎から学ぶ商法/小柿徳武他(有斐閣)・ 法律学小辞典第5版(有斐閣)/判例六法(有斐閣)/過去問題(H23(問38肢1)

基礎から学ぶ商法

新品価格
¥3,080から
(2022/9/13 13:46時点)

※この「基礎から学ぶ商法」は、会社法・総則・商行為について、簡潔に記述されています。行政書士試験受験者には、資格試験向けのテキストを読まれている方が多いと思いますが、併せてこの「基礎から学ぶ商法」をお読みいただくと法律の勉強をしているのだと実感できるものと思います。私もこのブログを書くにあたり、おおいにこのテキストを活用しています。

【行政書士試験に合格する】を随時更新しています。 ご希望の方へ、更新情報をお送りします。gyosho@shiragami.jp へメールアドレス(件名なし)を送って下さい。随時、更新情報などをお送りします。

※Facebookのグループ「行政書士試験に合格する」を2022(R4)年4月27日に開設しました。 行政書士試験について興味、関心がある方や行政書士試験の受験生の皆様の参加をお待ちしています。URL:https://www.facebook.com/groups/2226745574149743

誤りなどがありましたら、お手数ですが、ご一報ください。

タイトルとURLをコピーしました