40201「名板貸人と名板借人の連帯責任で名板貸人にも履行の請求ができる/名板貸し」行政書士試験の商法会社法

 商法会社法チェック
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このブログは、行政書士試験の過去問題から商法会社法の重要事項をピックアップし、問題文の出題意図を、いかに見つけ出すのかをメインに解説しています。つまり、いかに「ひっかけ」の部分を見つけ出すか、ということです。重要ポイントとしてチェックしてください。
スマートホンを使えば通勤や通学の時間にチェックすることができます。 条文や判例を中心にそのポイントをおさえてください。

「名板貸人と名板借人の連帯責任で名板貸人にも履行の請求ができる」

【ひっかけは?】

(正)商人Aが、商人Bに対してAの商号をもって営業を行うことを許諾したところ、Aの商号を使用したBと取引をした相手方Cは、当該取引(以下、「本件取引」という。)を自己とAとの取引であると誤認した。本件取引の相手方の誤認についてCに過失がなかった場合、契約は【B】とCとの間で成立し、【B】が本件取引によって生じた債務について【A(名板貸人)はB(名板借人)と連帯して】責任を負う【ことになり】、Cは【A】に対しても履行の請求をすることができる。

《ひっかけはここ!》

(誤)”商人Aが、商人Bに対してAの商号をもって営業を行うことを許諾したところ、Aの商号を使用したBと取引をした相手方Cは、当該取引(以下、「本件取引」という。)を自己とAとの取引であると誤認した。本件取引の相手方の誤認についてCに過失がなかった場合、契約はとCとの間で成立し、が本件取引によって生じた債務について( )責任を負う、Cはに対しても履行の請求をすることができる。”(過去問より引用)

【解説】

・名板貸し(自己の商号の使用を他人に許諾した商人)の責任の問題です。

・商人A(名板貸人・ないたがしにん)が、自己(商人A)の商号を使用して営業または事業を行うことを商人B(名板借人・ないたがりにん)に許諾することを名板貸し(ないたがし)といいます。

契約は商人A(名板貸人)と相手方Cとの間ではなく、商人B(名板借人)と相手方Cとの間に成立することになります。
・相手方Cが「自己と名板貸人Aとの取引である」との誤認について、相手方Cに過失がなかった場合、名板借人Bが本件取引によって生じた債務について名板貸人Aは名板借人Bと連帯して責任を負うことになります。

・「連帯して責任を負うこと」を連帯債務といい、複数の債務者が、各自債権者に対して同一内容の可分の給付債務を負い、そのうちの1人が給付すればすべての債務者が債務を免れるという関係にあるもののことです。

相手方Cは、連帯債務者の一人に対して全部か一部の履行の請求ができるし、同時に請求することもできます。また、順番にすべての連帯債務者に請求することもできるのです。つまり、商人Bだけでなく商人Aに対しても履行の請求をすることができるのです。

【条文と関係図】

(自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任)
商法14条 自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人(※名板借人)に許諾した商人(※名板貸人)は、当該商人(※名板貸人)が当該営業を行うものと誤認して当該他人(※名板借人)と取引をした者(※相手方)に対し、当該他人(※名板借人)と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

(連帯債務者に対する履行の請求)
民法436条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者(※相手方)は、その連帯債務者(※名板貸人と名板借人)の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者(※名板貸人と名板借人)に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

《関係図》

商人A(許諾した商人・名板貸人)
 ↑
名板貸し
 ↓
商人B(他人・名板借人)
 ↑
BC間に契約成立
 ↓
相手方C

〈BC間の債務について〉
相手方Cの「商人Aとの取引であると誤認」について、
①〈悪意なし=善意〉or〈重過失なしor軽過失なし(※過失なし)〉
 =商人Aと商人Bは連帯して責任を負う
②〈悪意なし=善意〉or〈重過失なしor軽過失あり〉
 =商人Aと商人Bは連帯して責任を負う
③〈悪意あり〉or〈重大な過失あり〉
 =商人Aは(連帯)責任を負わない
※ここでいう「悪意」とは、「商人Bとの取引であると」知っていたということです。「善意」とは、「商人Bとの取引であると」知らなかったということです。

参考:関係図の説明(/名板貸30201~30205に共通)

・条文にはないのですが、”重大な過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、自己を営業主と誤認するについて重大な過失があつた者に対しては、名板貸人は、商法14条(旧23条)所定の責任を負わないと解するのが相当である。”(最高裁判所判決昭和41.1.27判決)という判例があります。

・つまり、誤認について相手方Cに悪意・重大な過失(重過失)があった場合には、商人A(名板貸人)は責任を負わないことになります。

・商人A(名板貸人)が、連帯して責任を負うことになるのは、誤認について相手方Cにまったく過失がなかった場合(重過失も軽過失もなかった場合)か軽過失のみがあった場合ということになります。

・過失には、不注意や注意義務違反の程度によって、「重過失(重大な過失)」と「軽過失」の二つがあります。重過失は、不注意や注意義務違反が甚(はな)はだしい場合で、軽過失は不注意や注意義務違反が多少なりともあった場合といわれています。問題文は、”本件取引の相手方の誤認についてC(相手方)に過失がなかった場合”としていますので、当然、重過失も軽過失もなかったということになります。


【白神英雄/行政書士・行政書士試験アドバイザー】
参考文献・引用:基礎から学ぶ商法/小柿徳武他(有斐閣)・ 法律学小辞典第5版(有斐閣)・判例六法(有斐閣)・ポケット六法(有斐閣)・過去問題

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※この「基礎から学ぶ商法」は、会社法・総則・商行為について、簡潔に記述されています。行政書士試験受験者には、資格試験向けのテキストを読まれている方が多いと思いますが、併せてこの「基礎から学ぶ商法」をお読みいただくと法律の勉強をしているのだと実感できるものと思います。私もこのブログを書くにあたり、おおいにこのテキストを活用しています。

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